「他社ではどのような人材育成に取り組んでいるんだろう?」という疑問を抱えている方は多いでしょう。
「従業員1人ひとりを成長させることが会社の成長につながる」といわれるほど、人材育成は重要です。
できることなら、他社の良い点を自社の人材育成に取り入れたいですよね。
そこで今回は、日本を代表する企業「トヨタ自動車」の人材育成について解説します。
トヨタの具体的な取り組みに加え、人材育成の理念や基本的な考え方も紹介。
自社の人材育成のヒントにつながると思うので、ぜひ参考にしてください。
目次
トヨタの人材育成の理念
出典:トヨタ公式ページ
トヨタの人材育成の理念は「モノづくりは人づくり」です。
これは、「優れた製品を生み出すには、前提として、従業員1人ひとりが優れた人間力や実行力を兼ね備えておく必要がある」という考えに基づいています。
そのため、トヨタは創業当初から人材育成に力を入れてきました。
だからこそ、日本を代表する企業へと成長したのでしょう。
人材育成に対する姿勢は現在も変わっておらず、「トヨタの看板がなくても活躍できる人材の育成」を目指して、取り組みを進めています。
トヨタの人材育成における基本的な考え方
トヨタでは、次の4つを人材育成の基本的な考え方として継承しています。
- 仕事を通じた自己成長の促進
- 従業員個々人の能力向上
- 中長期的な視点からの人材育成
- OJTの重視
それぞれについて、詳しく解説します。
仕事を通じた自己成長の促進
トヨタでは、以下の考え方を重視しています。
- 従業員にとっての仕事のやりがい=仕事を通して成長すること
- 会社が従業員にできる最大の人間性尊重=自己成長の機会を提供すること
そのうえで、「人材育成は徹底的に実施していく」という姿勢を持ち、OJTの際に挑戦的なテーマを設けたり、中長期的な視点で教育や人事異動を実施したりしています。
従業員個々人の能力向上
トヨタでは、従業員1人ひとりの能力を最大限活かすことを重視しているため、人材育成を「重要な経営投資」ととらえています。
また、従業員個々人の能力が向上すれば
- 少数精鋭集団の実現
- 固定人員の適正化
を達成でき、経済合理性を高められると考えています。
中長期的な視点からの人材育成
トヨタでは、トヨタ特有の知識や技術を身につけるにはある程度の時間が必要なので、中長期的な視点で人材育成に取り組み、組織全体のパフォーマンスを高めることが重要だと考えています。
その中でも、特に重視しているのが人事異動です。
優秀で意欲の高い従業員に対しては、将来のリーダー候補として中長期的・計画的な育成を実施。
- 従業員へのキャリアパスの提示
- 本人による意思表示
- 育成計画作成
- さまざまな部署での業務経験
などを通して、トヨタを担う人材へと成長させています。
OJTの重視
トヨタでは、「人材育成の基本は業務を通じたOJT」と考えています。
これは、日常の業務を通じて、上司が部下に課題解決の手法や対策を教授することが最も効果的だと考えているからです。
実際には、OJTを繰り返して上司が部下の実力・強み・弱みを把握し、それに基づいた人材育成を行っています。
参考:1.教育・人材育成の基本的な考え方(トヨタ自動車75年史)
トヨタの人材育成の具体的な仕組み・制度
それでは、トヨタの人材育成の具体的な仕組み・制度を10個紹介します。
自社の参考になる仕組み・制度はないか、気にしながら読み進めてください。
自己申告制度
自己申告制度は、従業員が将来の自身のキャリアについて考え、その実現のために上司とすり合わせを行う制度です。
従業員は「将来目指すべき人物像」を描き、その達成に必要な経験・能力などを自分で考えます。
その際、組織に必要な経験や専門性などをまとめた「能力マップ」を活用します。
自己申告制度の結果は人事異動の参考になるので、意欲的な従業員ほど積極的に取り組めるでしょう。
評価とフィードバック
従業員が年度始めに設定した目標に対して、上司が評価とその理由をフィードバックする制度です。
評価は各資格に求められる「人間力」「実行力」に基づいています。
また、評価の良し悪しが賃金に反映されるのも特徴。
半年単位の成果評価は、賞与に反映されます。
自信の頑張りが給与に影響するため、従業員のモチベーションにつながるのでしょう。
職場先輩制度
配属3年目までの従業員を対象に行われている制度です。
入社4〜10年目の先輩社員が付き、面倒を見ます。
ほぼマンツーマンで行うため、先輩社員は若手社員の相談役となります。
この制度によって、若手の成長だけでなく、教える側の先輩社員から「責任感が高まった」という声が多くあったようです。
1年目基礎固めプログラム
新入社員を対象とした研修プログラムです。
以下の3点を目標として、1年間かけて新入社員を育成していきます。
- 素直さ・謙虚さ・感謝の心・思いやり・チャレンジ精神といった素養・人間力の向上
- 問題解決能力や「トヨタウェイ」といった仕事の仕方と価値観
- 基本的ビジネススキルの習得
具体的には、販売店や工場での現場実習、各部門・分野での専門実習などを通して、トヨタで必要とされるノウハウを習得。
毎週の小テストに加え、中間試験・修了試験も実施して、定着を図ります。
さらに、英語教育に力を入れている点も特徴。
全員がTOEICで730点以上を取れるように教育しています。
基幹職能力向上プログラム
管理職を対象とした研修プログラムです。
具体的な内容は以下の通りです。
- 研修前に「何を学び、鍛えてもらうのか」を上司と受講者自身で相談し、明確にする
- OJTを重視する
- 参加者同士で評価・フィードバックを行う
- 上位資格者にはゼミ形式の読書会に参加してもらう
- 社会貢献活動の義務化
「参加者同士の評価・フィードバック」は、iPadで録画し、振り返るようにしています。
指摘されただけでは分からない、自分の癖を明らかにすることが狙いです。
例えば、話すときに「えー」や「うー」が多いといわれても、話している自分は無意識でやっているので、イマイチ分かりませんよね。
でも、動画で振り返ることで「思ったよりたくさん言っているな」と分かるはずです。
また「読書会」では、
- 幸之助論ー『経営の神様』松下幸之助の物語
- 武士道
- 学問のすすめ
- 君子論
など、古典を含めたさまざまなジャンルの書籍を読みます。
教養を身につけ、人間力を伸ばすことが狙いです。
修行派遣
国内関係先や海外事業体、他本部・他領域など、職場外に従業員を派遣する制度です。
以下の3点を目的としています。
- 専門性の向上
- 不慣れな環境下でやりきる胆力の習得
- グローバルに活躍できる素養の習得
チャレンジキャリア制度
トヨタでの経験を踏まえ、「社外で活躍したい」という従業員を支援する制度です。
2019年に、トヨタの豊田章男社長が「終身雇用を守ることは難しい」と発言し、話題となりました。
すぐに大量のリストラが始まることはありません。
しかし、近い将来、終身雇用が当たり前ではない時代が来るかもしれません。
それを見越してかは分かりませんが、トヨタでは自社から羽ばたこうとする従業員すらもサポートする制度が存在しています。
英語教育
海外にも多くの販売拠点や生産拠点があるトヨタでは、英語教育にも力を入れています。
1990年代終わりには、「主任職昇格のためにはTOEIC600点以上が必要」という条件を設けています。
現在では担当事技職から指導職への昇格にも、同様にTOEIC600点以上が必要。
1年目の従業員にはTOEIC730点以上を目標に取り組んでいます。
現場実習
販売現場や生産現場を知るための実習です。
新入社員や中途入社者を対象として行われます。
会長・社長・副社長の業務秘書
3〜4ヶ月の間、可能な限り会長や社長、副社長に同行する研修です。
トップの考え方や意思決定を間近で学び、将来の幹部候補としての自覚を養うことが狙い。
かなり厳しい研修で、優秀な従業員の中でも選ばれた人しか参加できないようです。
選ばれた人は、決済や会議の場、夜の外食や土日のイベントなど、会長・社長・副社長に張り付いて動きます。
その中で、トップがいかに会社や部下を優先させて物事を考え、それを実践しているかを学びます。
人材育成のすべてをトヨタ1社で担っているわけではない
ここまで読んで「トヨタみたいに人材育成に取り組みたいけど、日々の業務で手一杯で、なかなか余裕がない」と感じている方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、「BPO(Business Process outsourcing)」です。
BPOとは、アウトソーシングの一種。
委託先の自由度が高く、対象となる業務範囲が広いことが特徴です。
人材育成を専門に行っているBPOも存在するため、依頼すれば自社のリソースを割かずに、専門性の高い人材育成に取り組めます。
実際、トヨタでも、人材育成の一部をBPOに依頼しています。
この記事を読んで「人材育成にもっと積極的に取り組みたい」と感じた方は、BPOへの依頼を検討してみてはいかがでしょうか?
なお、BPOについては、以下の記事で詳しく解説しています。
気になる方はぜひ参考にしてください。
関連記事:BPOサービスで人材育成してもらうメリット・デメリットを解説
まとめ:トヨタを参考に、自社の人材育成を考えよう
日本を代表する企業、トヨタ自動車の人材育成について紹介しました。
トヨタでは「モノづくりは人づくり」の理念のもと、人材育成に積極的に取り組んでいます。
人材育成に力を入れていたからこそ、世界的な企業へと成長したのでしょう。
また、人材育成のすべてをトヨタ1社で行うのではなく、BPOも取り入れているのもポイント。
自社の人材育成に課題を抱えている場合は、トヨタの事例を参考にするのはもちろん、BPOへの委託も含めて、検討してみてくださいね。
なお、弊社サムシングファンでは、動画制作のBPOサービスを提供しています。
動画分析ツール「DOOONUT」を使って、動画制作やデータ分析などを一括で委託できます。
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