成果物の設計図ともいえる「仕様書」。
システム開発やソフトウェア開発の分野だけでなく、動画制作でも仕様書が重要なのはご存じでしょうか?
制作会社が作ることが多いのですが、発注者が作っておく方が自社の考えを反映できるためおすすめです。
この記事では、動画制作の仕様書の作り方や、仕様書を作るメリットについて解説します。
「動画制作の外注を検討している」「動画制作の仕様書の作り方がわからない」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
動画制作における仕様書とは
動画制作における仕様書とは、動画の内容や予算、制作スケジュールなどをまとめた文書のことです。
動画を作る際、発注者側は「こんな動画を作りたい」と、漠然としたイメージを持っています。
しかし、イメージが曖昧なままだと、制作会社はどんな動画を作ればいいかわかりません。
その結果、発注者のイメージとは異なる動画になることがあります。
イメージ通りの動画を作るには、発注者と制作会社が的確に意思疎通を図り、頭の中のイメージを丁寧に具体化していくことが大切です。
そこで必要なのが「仕様書」です。
仕様書は作る過程で頭の中のイメージを具体化できるため、制作会社に完成イメージを共有しやすくなります。
また、認識のズレやミスコミュニケーションを防ぎ、やりとりもスムーズになります。
実際「動画制作の成否は仕様書で7割が決まる」といわれるほど、仕様書作成は重要なプロセスです。
動画施策を成功させるためには、まずは丁寧な仕様書作りから始めましょう。
動画制作で仕様書を作るメリット
動画制作の仕様書を作るメリットは以下の2点です。
- 動画制作の目的や完成イメージが明確になる
- 発注後のトラブルを防げる
それぞれについて、詳しく解説します。
動画制作の目的や完成イメージが明確になる
仕様書は、動画制作の目的や具体的な映像イメージなど、内容に関するあらゆることを記載した文書です。
頭の中では曖昧なイメージでも、実際に文書に落とし込むことで、人に伝えやすい明確な内容に変化します。
その結果、動画制作の目的や方向性が定まり、制作会社に共有しやすくなります。
発注後のトラブルを防げる
仕様書を作って完成イメージを言語化しておけば、曖昧な部分がなくなるため、発注後のトラブル防止にもつながります。
口頭で伝えるだけではイメージのズレが生じやすく、納品後に「思っていたのと違う」となり、トラブルへと発展しかねません。
また、仕様書に重要事項を明記しておくことで、認識の食い違いや「言った」「言っていない」の水掛け論も防止できます。
動画制作の仕様書に必要な項目
動画制作の仕様書に必要な項目は多岐にわたりますが、大きく分けると以下の6項目になります。
- プロジェクトの概要
- 会社概要
- 動画の要件
- 制作会社に提案してほしい内容
- 法務要件
- 進め方
それぞれの項目について、詳しく紹介します。
仕様書の項目①プロジェクトの概要
まずはプロジェクト概要として、
- プロジェクト名
- 動画制作の目的
- KGI(目標となる数値)
- 動画制作に至った背景・自社の課題
- 掲載媒体
- 公開希望日
- 予算
を明記しましょう。
プロジェクト名
最初にプロジェクト名を記載します。
「商品紹介」や「リクルート動画」など、動画のジャンルがわかりやすい名前を付けるのがおすすめです。
動画制作の目的
仕様書の中で最も大切な項目です。
動画の方向性やテイストを決める軸となるので、「何のために動画を作るのか」が伝わるように、丁寧に記載しましょう。
KGI(目標となる数値)
目的は言葉だけでなく、数値でも明記しましょう。
具体的には、「KGI(重要目標達成指標)」と呼ばれる、プロジェクトの最終目標となる数値を記載します。
理由は、制作会社がKGIを元に戦略を練るからです。
「月間問合せ件数を2倍にする」「売上を前年比150%に伸ばす」と具体的に記載されていた方が、適切な戦略を考えやすくなります。
動画制作に至った背景・自社の課題
自社の現状や課題も記載しましょう。
制作の背景がわかると、制作会社が訴求ポイントを考えやすくなります。
掲載媒体
動画を掲載する媒体は、SNSだけでなく、ホームページや街頭スクリーンなどさまざまです。
掲載媒体によって、動画の長さやフォーマット、制作費が変わってきます。
例えば、大型モニター用の動画をSNS用の動画と同じように撮影すると、画質が荒くなってしまいます。
何で動画を流したいのか、明確にしておきましょう。
公開希望日
公開希望日、または納品希望日も記載します。
なぜその日に設定したのか理由も明記しておくと、制作会社がスケジュールを立てる際の参考になります。
予算
「100〜120万円」など、わかる範囲で正確な予算を記載しましょう。
「100〜200万円」と幅の広い予算を提示すると、制作会社は「いくら支払ってくれるかわからない」と不信感を抱き、提案が曖昧になってしまう恐れがあります。
また、修正などで追加料金が発生することもあるので、上限を明確にしておくこともポイントです。
もし予算が決まっていない場合は「要相談」と書き、相談の中でどれくらいの費用がかかるか聞きましょう。
仕様書の項目②会社概要
次に、会社概要として以下の項目を記載します。
- 事業内容
- ペルソナ
- 自社の強み
- 現在の状況
- 競合企業
事業内容
制作会社に自社のイメージを持ってもらうために、事業内容を具体的に記載します。
ペルソナ
自社事業のペルソナを記載します。
記載する理由は、ペルソナによって訴求方法が変わってくるからです。
「年代」「性別」「職業」「居住地」「年収」「家族構成」の6つは最低限記載しましょう。
なお、BtoBの場合は細かく設定する必要はありません。
自社の強み
自社の強みは、訴求ポイントを考えるうえで重要です。
可能な限り列挙しましょう。
現在の状況
現在の事業の状況を整理します。
問合せ件数や成約率など、数値を使うとわかりやすく表現できます。
競合企業
競合分析をして、差別化戦略を考える際に重要です。
ライバル企業と目標とする企業の2種類を書くのがおすすめです。
仕様書の項目③動画の要件
次に、動画の具体的な内容について記載します。
項目は多くなりますが、制作会社はここの内容を元に提案を考えます。
「提案を受けるためのもの」なので、大枠を決める程度で十分です。
- 動画に期待する効果
- 表現方法
- 動画の長さ
- 掲載媒体
- 素材
- ナレーションの有無
- 出演者
- 撮影場所
- 納品形式
- 参考動画
動画に期待する効果
動画の目的と似ていますが、動画に期待する効果を記載します。
訴求方法を考えるうえで重要です。
表現方法
実写動画にするかアニメーション動画にするか、理由と共に記載します。
それぞれのメリットと相性の良い動画は以下の通りです。
動画の種類 | メリット | 相性の良い動画 |
実写動画 |
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アニメーション動画 |
|
|
動画の長さ
30秒、60秒など、動画の長さを大まかに記載しましょう。
理由は以下の2点です。
- 動画の長さによって制作費が変わるから
- 掲載媒体によって適切な長さが異なるから
掲載媒体
ここにも掲載媒体を記載しておきます。
内容は先ほどと同じで十分ですが、なぜその媒体を選んだか、理由も明記しておきましょう。
素材
動画で使う写真や音源、イラストなどについて記載します。
自社で用意するものと制作会社で用意するものを明確にしておきましょう。
制作会社に任せる場合は、フリー素材を使うか、購入を許可するか、わかる範囲で記載します。
ナレーションの有無
ナレーションの有無を記載します。
必要な場合は、イメージしている声も明記しましょう。
出演者
実写動画の場合は、出演者についても記載します。
出演者が必要な場合、自社で用意するのか、制作会社に手配してもらうのか明記してください。
プロの役者を起用する場合、費用は高くなりますが、その分クオリティが上がります。
一方で自社の社員などの素人の場合、費用は抑えられますが、表情やセリフに硬さが出てしまうといった点に注意が必要です。
撮影場所
実写動画の場合に必要な項目です。
撮影場所を記載することで、スケジュールを立てる際の参考になります。
なお、ロケを考える際は、余裕を持ったスケジュールを立ててください。
移動が発生するうえに、機材のセッティング・撤収に時間がかかるからです。
複数の撮影場所がある場合、日程を複数に分けるのがおすすめです。
納品形式
あまり重要ではありませんが、MP4やMOVなど、希望する納品形式があれば記載します。
何が良いのかわからない場合は、記載しなくても大丈夫です。
参考動画
完成イメージに近い動画があれば、そのリンクを記載します。
制作会社のホームページやYouTubeなどで探すのがおすすめです。
仕様書の項目④制作会社に提案してほしい内容
次に、制作会社に提案して欲しい内容として、以下の5つを記載します。
- スケジュール
- 企画案
- 絵コンテ
- 見積もり金額
- 担当者・体制図
スケジュール
公開希望日だけでなく、動画制作にかかるスケジュールを共有してもらいます。
企画から納品までの大まかなスケジュールではなく、工程ごとのスケジュールと、工程ごとに発注者が対応することを明確にしてください。
なお、動画制作の流れについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【撮影前から完成まで】押さえておきたい動画制作の流れと依頼時の注意点
企画案
大まかなストーリーを提案してもらいます。
目的を達成できそうか、しっかり吟味してみてください。
絵コンテ
絵コンテとは、動画の内容をまとめた指示書のようなものです。
イラストやセリフ、効果音などを記載して、どんな動画になるかを具体的に示しています。
事前にあると便利ですが、有料になる場合があります。
無料、もしくは納得のいく金額であれば依頼してください。
見積もり金額
「全体で200万円」といった大まかな金額ではなく、ある程度詳しい見積もり金額を教えてもらいましょう。
仕様書①〜③の項目が詳しく書けていれば、「機材費◯○万円」「人件費◯◯万円」といった具合には出せるはずです。
なお、動画制作の費用相場については、以下の記事を参考にしてください。
費用を安く抑えるポイントも紹介しています。
関連記事:【一覧・実例あり】動画制作費の相場とは?選び方や安く抑える方法
担当者・体制図
最後に担当者・体制図を共有してもらいます。
「誰とやりとりするのか」「窓口とディレクターは一緒か」などを確認しましょう。
仕様書の項目⑤法務要件
トラブル防止のために、法務要件も記載しておきます。
動画制作では、「知らないうちに著作権に抵触していた」「永続ライセンスだと思っていた素材が実は使えなかった」などのトラブルが起こり得ます。
法律は素人には理解しにくい部分もありますが、わかる範囲で記載しておきましょう。
仕様書の項目⑥進め方
最後に今後の進め方として、提案書の期限と提出先を記載しておきましょう。
提案を受ける際は、提案書だけでなく、リアルまたはオンラインで、プレゼンを聞くのがおすすめです。
提案の内容だけでなく、担当者との相性もチェックできるからです。
「この人と一緒に仕事したい」という点も、制作会社選びのポイントですよ。
動画制作の仕様書を作るときのポイント
動画制作の仕様書を作るときのポイントは以下の5点です。
- 動画制作の目的を定量的に記載する
- 図やイラストを使う
- 細かい内容まで記載する
- 複数の制作会社から提案を受ける
- わからないことは制作会社に質問する
それぞれについて、詳しく解説します。
動画制作の目的を定量的に記載する
動画制作の目的がわかると、制作会社は提案しやすくなります。
定量的な表現だとさらにわかりやすいため、数値で表現するのがおすすめです。
図やイラストを使う
仕様書を丁寧に作成したつもりでも、文字情報だけではどうしても伝わりにくい場合があります。
特に動画はビジュアル要素が強いため、伝えた内容がまったく違うイメージに捉えられてしまうことも珍しくありません。
しかし、図やイラストで視覚的に伝えることで、頭の中のイメージを正確に伝えられます。
「言葉で伝えにくい」と感じたら、積極的に図やイラストを使っていきましょう。
細かい内容まで記載する
発注者・制作会社共に明確な完成イメージを持てるよう、仕様書には細かい内容まで記載しましょう。
制作会社によっては徹底的なヒアリングで希望をくみ取ってくれますが、仕様書の内容が薄いと、以下のリスクがあります。
- 完成イメージと違った動画ができる
- オリジナリティの低い動画ができる
- 熱意がないと判断される
また、商品やサービスに関する資料を用意するのもおすすめです。
動画制作のヒントになり得るうえに、発注者の熱意も伝わるからです。
制作前では決まっていないことも多いかもしれません。
しかし、可能な限り細かく仕様書を作ることで、制作がスムーズに進み、イメージに近い動画が仕上がります。
複数の制作会社から提案を受ける
仕様書が完成したら、必ず複数の制作会社に見てもらい、提案を受けるようにしましょう。
その理由は、どの制作会社が自社の課題解決に最も貢献できそうか、比較検討できるからです。
発注者側としては、予算内で最も効果のある動画を作ってくれそうな制作会社を選びたいですよね。
より良いパートナーを見つけるために、選択肢を複数持つようにしましょう。
わからないことは制作会社に質問する
仕様書を作る段階でわからない部分があれば、素直に制作会社に質問しましょう。
動画は専門用語の多いジャンルです。
ノウハウがない場合、わからない言葉が散見するのは当然です。
制作会社としても、発注者の知識レベルがわかるので、コミュニケーションをとりやすくなります。
また、発注者の熱意を伝えることもできますし、思わぬアイデアが生まれることもあります。
わからない部分をそのままにしておくと、それが原因で完成イメージからズレた動画になることもあるでしょう。
気になることは必ず質問して、引っ掛かりなく進められるようにしましょう。
まとめ:動画制作を外注するときは丁寧な仕様書作りが大切
動画制作の仕様書について解説しました。
最後に、動画制作の仕様書に必要な項目をまとめておきますね。
①プロジェクトの概要 |
|
②会社概要 |
|
③動画の要件 |
|
④制作会社に提案して欲しい内容 |
|
⑤法務要件 | |
⑥進め方 |
仕様書作成の目的は「完成イメージの共有」です。
そのため、今回紹介した内容がすべて揃っている必要はありません。
しかし、細かく作り込んでおくほど制作会社との意思疎通がしやすくなり、イメージ通りの動画を作りやすくなります。
頭の中のイメージに近づけるよう、仕様書は丁寧に作成してください。
なお、弊社サムシングファンでは、動画を活用して企業が抱える課題の解決を図る「動画DX®︎」を推進しています。
これから動画制作の仕様書を作る場合は「動画DX®︎」を見越した動画制作を目指してみてはいかがでしょうか?
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