「ナレッジマネジメントを活用すれば企業価値の向上や競争力強化につながる」とよくいわれます。
とはいえ、以下の疑問をお持ちの方も多いと思います。
- そもそもナレッジマネジメントってなに?
- ナレッジマネジメントのメリットは?
- どうやって導入すればいいの?
そこで今回は、ナレッジマネジメントの意味やメリット、主な手法を紹介します。
また、ナレッジマネジメントでおすすめの方法についても解説します。
人材育成や今後の企業経営に役立つ考え方なので、ぜひ参考にしてください。
目次
ナレッジマネジメントの概要
まずはナレッジマネジメントの意味と、キーワードである「暗黙知」「形式知」について解説します。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、個人が持つノウハウを組織全体で共有し、生産性向上やイノベーションの創出などにつなげる経営手法です。
ナレッジとは、英語の「Knowledge」のこと。
知識やスキルなど、業務上で役立つ情報を意味します。
ナレッジマネジメントで重要な「暗黙知」と「形式知」
ナレッジマネジメントを考えるうえで重要なのが、「暗黙知」と「形式知」です。
それぞれの意味は以下の通りです。
- 暗黙知:個人のノウハウや経験。言葉で表現しないと共有されにくい。
- 形式知:言葉で表された知識やデータのこと。
いかにして暗黙知を形式知に変換するかが、ナレッジマネジメントを成功させる鍵です。
かつての日本企業では、ベテランのノウハウは自然と次の世代に受け継がれていました。
暗黙知の継承が難なく行われていたのです。
しかし、現在は終身雇用制度の事実上の崩壊や働き方の多様化が進み、かつてのやり方では暗黙知の継承が難しくなりました。
暗黙知の継承には、膨大な時間が必要だからです。
そこで、ナレッジマネジメントが注目されるようになりました。
ナレッジマネジメントによって暗黙知を形式知に変換できれば、さらに高度な知識が生まれ、組織全体のレベルアップにつながります。
ナレッジマネジメントに取り組むメリット
ナレッジマネジメントに取り組むメリットは以下の通りです。
- 組織力を強化できる
- 効率的な人材育成ができる
- 業務の効率化ができる
- コスト削減につながる
- 事業継続が容易になる
それぞれについて詳しく解説します。
組織力を強化できる
個人のノウハウを共有すると、組織力強化につながります。
理由は以下の通りです。
- 社員の退職・休職による業務の停滞やトラブルを回避できるから
- 他部署の情報にもアクセスでき、アイデア創出やスキルアップができるから
- 社員同士のつながりが生まれ、会社に対する満足度の向上が期待できるから
効率的な人材育成ができる
ナレッジマネジメントが行き届いていると、効率的な人材育成が可能です。
例えば、営業が得意な社員が自身のノウハウを他の社員に共有すれば、同じ業務をする際の参考にできます。
会社全体の業績向上につながることも期待できるでしょう。
また、新入社員の育成においても効果的です。
新入社員は同じような疑問を持ちやすく、上司は複数人から同じ質問を受けることがあります。
これでは、上司の負担は増える一方です。
しかし、ナレッジマネジメントが行き届いていれば、特定の上司以外でも質問に答えられます。
その結果、1人ひとりの負担を減らし、効率的な人材育成が可能となるのです。
業務の効率化ができる
ナレッジが共有されていないと、作業の分担が難しくなります。
その結果、特定の社員に業務が集中したり、業務の集中によって作業が遅れたりすることがあります。
しかし、ナレッジが共有されていると社員同士で協力して作業できるため、業務の効率化が可能です。
コスト削減につながる
ナレッジの共有によって業務が分担されると、全社的な残業時間の削減が可能です。
その結果、残業代などの人件費削減が実現できます。
事業継承が容易になる
熟練したスキルを持つ社員や経験豊富な社員が離職するのは、企業にとって大きな損失です。
社員と一緒に、蓄積されてきたナレッジが失ってしまうからです。
しかし、文字や動画などでナレッジを共有できていれば、自然と次の世代に引き継がれ、大きな問題なく事業を継続できます。
ナレッジマネジメントの4つの手法
ナレッジマネジメントには、以下の4つの手法があります。
- 経営資本・戦略策定型
- 顧客知識共有型
- ベストプラクティス型
- 専門知識型
それぞれについて詳しく解説します。
経営資本・戦略策定型
経営資本・戦略策定型は、社員それぞれが持っているナレッジを多角的に分析し、経営戦略に活かす手法です。
過去のデータに基づいた戦略的かつ現実的な経営や意思決定ができるようになります。
また、業務プロセスが明確になることで、改善ポイントを見つけやすくなることも特徴です。
管理するデータ量が多いので、ほとんどの場合専用ツールを使用します。
顧客知識共有型
顧客知識共有型は、顧客からの問い合わせやクレームなどの内容・対応履歴をデータベース化して共有することで、最適な対応策を生み出す手法です。
顧客に関する膨大なデータを蓄積しておくことで、自分が経験したことのない問い合わせがあっても、適切な対応がとれるようになります。
部署や社員による対応品質の差が少なくなり、顧客満足度の向上が期待できます。
ベストプラクティス型
ベストプラクティス型は、優秀な社員のナレッジを共有することで、組織全体のレベルアップを図る手法です。
例えば、優秀な営業担当のナレッジを多角的に分析して、暗黙知を形式知に変換。
勝ちパターンを共有して、他の社員の営業力向上につなげるといった感じです。
しかし、個人成果主義の強い企業では成立しにくいので注意してください。
対象となった社員が「自分のやり方を取られたくない」と、ノウハウを共有したがらないからです。
そのため、ナレッジ共有に対する評価制度や特別手当などを設け、インセンティブを得られる仕組みを作ることが必要です。
専門知識型
専門知識型は、組織内の専門知識をデータベース化し、すぐに検索・閲覧できるようにする手法です。
「FAQページ」や「社内Wiki」が主な例です。
知りたい情報をすぐに知れるようになるため、担当者の負担が減るうえに、他の業務に充てられる時間を確保できます。
そのため、問い合わせ対応のスピードアップや対応品質の向上が期待できます。
情報システムなど、組織内外からの問い合わせが多い部署で効果的です。
ナレッジマネジメントで重要な「SECIモデル」とは
ナレッジマネジメントでは、「SECI(セキ)モデル」というフレームワークが重要です。
「SECI」とは、以下の4つのプロセスの頭文字に由来します。
- 共同化(Socialization)
- 表出化(Externalization)
- 連結化(Combination)
- 内面化(Internalization)
「共同化→表出化→連結化→内面化」というプロセスを繰り返すことで、ナレッジをアップデートし、組織のレベルアップにつなげます。
それぞれのプロセスについて、詳しく解説します。
共同化(Socialization)
共同化は、共通の作業や体験を通して、社員の中に同じ暗黙知を創り出すプロセスです。
OJTやロールプレイングなどが当てはまります。
相互理解を深めることが重要で、身体や五感を使いながら感覚を養います。
表出化(Externalization)
表出化は、暗黙知を形式知に変換するプロセスです。
共同化で獲得した暗黙知を、言葉や図式、映像などを使って形式知に変換します。
具体的には、上司への業務報告や業務マニュアルの作成が当てはまります。
論理的に話すこと、具体例を盛り込むなど、周囲の理解を深めるための工夫が重要です。
連結化(Combination)
連結化は、表出化で明確化された形式知同士を連結させることで、新たな知識体系を創造するプロセスです。
具体的には、自分の仕事に他の社員のノウハウを取り入れることで業務が効率化したり、新たなアイデアが生まれたりすることが該当します。
なお、このプロセスで生まれた新たな知識体系は、連結後も形式知のままの状態となります。
内面化(Internalization)
内面化は、連結化で得られた形式知を実践して、新たな暗黙知を得るプロセスです。
例えば、先輩や同僚の仕事を参考にして実践した結果、自身の業務の質が向上するとともに、自分なりの工夫(暗黙知)が生まれます。
こうして「共同化→表出化→連結化→内面化」の4つのプロセスを繰り返すと、絶えずナレッジがアップデートされ、組織全体がレベルアップしていきます。
ナレッジマネジメントに取り組む際は、SECIモデルのサイクルを意識するのがポイントです。
ナレッジマネジメントを導入する手順
ナレッジマネジメントを導入する場合は、次のフローで進めるのがおすすめです。
- 目的を明確化する
- 共有したいナレッジを選ぶ
- 業務プロセスにナレッジ共有を組み込む
- 定期的な見直しを行う
それぞれのステップについて、詳しく解説します。
ステップ①目的を明確化する
まずはナレッジマネジメントを導入する目的を明確にして、組織内で共有しましょう。
その際、以下の2点を伝えるようにしてください。
- 組織や社員にどんなメリットがあるのか
- 会社としてどんな目標を達成したいのか
社員1人ひとりが”自分ごと”として捉えられるように、具体的に共有することがポイントです。
ステップ②蓄積するナレッジを選ぶ
次に、目的に合わせて蓄積するナレッジを選びます。
自社の課題を洗い出すことで、必要なナレッジが見えてきます。
例えば、コールセンター業務の生産性向上が目的の場合、以下のナレッジの蓄積が有効です。
- 問い合わせごとの最適な対応例
- トラブルへの対処法
- 自社製品に関する知識
- 優秀なオペレーターの会話術
なお、蓄積するナレッジを決めておけば、社員が共有すべき情報としなくてもいい情報で迷うこともなくなります。
ステップ③業務プロセスにナレッジ共有を組み込む
全ての社員が当たり前のようにナレッジを共有できるように、業務プロセスにナレッジ共有を組み込みましょう。
作業負担を減らすために、専用ツールを導入するのもおすすめです。
また、前述した「SECIモデル」を意識することも重要です。
ステップ④定期的な見直しを行う
ナレッジマネジメントを始めたら、効果測定を実施して定期的な見直しを行いましょう。
やりっ放しでは、効果が出ているのか把握できませんからね。
社員へのアンケートなどで、ナレッジの共有ができているか、狙った効果が得られているか確認します。
課題が見つかれば改善を行い、プロセスをさらに良いものにしていきましょう。
ナレッジマネジメントの事例
続いて、ナレッジマネジメントの事例として以下の3つを紹介します。
- auコマース&ライフ株式会社:業務効率化
- 花王株式会社:顧客ニーズを反映した商品開発
- NTT東日本法人営業部:オンライン・オフラインでのナレッジ共有
auコマース&ライフ株式会社:業務効率化
auコマース&ライフ株式会社は、複数のショッピングサイトを運営している企業です。
ナレッジマネジメントによって、問い合わせ業務やコールセンター業務の効率化を図りました。
具体的には、FAQシステムの導入が挙げられます。
オペレーターは顧客対応中にもマニュアルを確認できるので、欲しい情報をすぐに入手できるようになりました。
また、対応フローを一新することで、問い合わせ対応後の処理時間を40%削減することにも成功しています。
花王株式会社:顧客ニーズを反映した商品開発
出典:花王株式会社
ヘルスケア商品を提供する花王株式会社では、ナレッジマネジメントによって顧客ニーズを反映した商品開発を実現しました。
具体的には、サポートデスクに届いた顧客の声を、データとしてシステム上に蓄積。
システムは社内で共有されているため、商品開発部はいつでも顧客の声を確認できるようになりました。
その結果、顧客のニーズを細かく把握できるようになり、ニーズに合った商品開発ができるようになりました。
NTT東日本法人営業部:オンライン・オフラインでのナレッジ共有
出典:NTT東日本
NTT東日本法人営業部では、オンラインとオフラインの両方でナレッジが共有される仕組みを作りました。
まず、オフラインでは、社内コミュニケーションの活性化を図りました。
具体的には、フリーアドレスの導入や、ドリンクコーナーのあるリフレッシュゾーンを設置。
社員が気軽にノウハウを共有できる環境整備を進めました。
一方オンラインでは、全社員が個々のホームページを開設。
自分のホームページに日報やタスクをアップロードすることで、業務に関する情報共有が促進されました。
このような取り組みの結果、社員同士のつながりが強まり、気軽にナレッジが共有される雰囲気が醸成されました。
動画制作のBPOを利用してナレッジマネジメントを行うのもおすすめ
近年では、動画学習が一般的になっています。
ナレッジマネジメントにおいても、動画で暗黙知を形式知に変換することは効果的です。
しかし「そもそも自社に動画を作るノウハウがない」と思った方もいるでしょう。
そこでおすすめなのが、動画制作のBPOサービスです。
BPO(Business Process Outsourcing)とは、アウトソーシングの一種です。
業務プロセスの企画から実施までを外部委託するため、委託先の自由度が高いことが特徴です。
主なメリットは以下の通りです。
- 専門的なサービスを受けられる
- コストを削減できる
- コア業務に人的リソースを集中できる
BPOについては、以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてください。
関連記事:BPOのメリットとデメリットとは?選定する際のポイントも解説
まとめ:ナレッジマネジメントで組織力を強化しよう
ナレッジマネジメントについて解説しました。
ナレッジマネジメントとは、個人が持つノウハウを組織全体で共有し、生産性向上やイノベーションの創出などにつなげる経営手法です。
主なメリットとしては以下の通りです。
- 組織力を強化できる
- 効率的な人材育成ができる
- 業務の効率化ができる
- コスト削減につながる
- 事業継承が容易になる
なお、ナレッジマネジメントでは動画の活用もおすすめと紹介しました。
弊社サムシングファンでは、動画活用のBPOサービス「DOOONUT」を提供しています。
DOOONUTがあれば、動画の作成や配信、効果測定を社内で完結できます。
言葉だけでは伝えにくいナレッジを、映像を使ってわかりやすく伝えることが可能です。
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詳しい資料は、下記のバナーからダウンロード可能です。
ぜひ参考にしてください。