「人材育成は企業の最重要事項である」ということがよくいわれています。
しかし、
- 新しく人材育成担当になったけど、やり方やコツが分からない
- 人材育成に取り組んでいるけど、イマイチ効果が出ない
といった悩みを抱えている担当者の方も多いでしょう。
そこで今回は、人材育成の基本的な考え方や主な手法、成功させるためのポイントなどを解説します。
自社の人材育成について見つめ直すきっかけになると思うので、人材育成の担当者の方はぜひ参考にしてください。
目次
人材育成とは
人材育成とは、企業の事業や成長に貢献できる人材を育てることです。
単に仕事ができる社員を育成するのではなく、主体性や自律性の向上に重きを置き、自分の意志で行動できる社員を育てることが重要です。
社員1人ひとりが成長し、存分に能力を発揮できるようになれば、企業の成長や業績アップにつながるでしょう。
そのため、「会社を成長させたい」「将来にわたって事業を続けたい」と考えている企業は積極的に取り組むべきです。
人材育成の目的
人材育成を行う前に、まずは人材育成の目的を確認しておきましょう。
目的が共有できていれば、組織全体で人材育成に取り組むことができます。
人材育成の主な目的は4つです。
それぞれについて解説します。
人材育成の目的①将来のリーダーの育成
将来にわたって企業が事業を続けるためには、リーダーとなる人材が必要です。
企業の代表はもちろん、チームリーダーや経営層など、リーダーと呼ばれるポジションはたくさんあります。
リーダーが育つ仕組みができていれば、企業の将来はある程度担保されるでしょう。
特に、人材の限られている中小企業では、採用の段階から将来を見据えて育成する意識を持っておきましょう。
人材育成の目的②生産性の向上
個々のスキルを伸ばして、企業全体の生産性向上に結びつけることは、人材育成の目的の中でも特に重要視されています。
採用したばかりの新入社員は、すぐに業務をテキパキとこなせるわけではありません。
企業の戦力とするためにも、じっくりと育成していく必要があります。
特に、現在あらゆる業界で、人手不足が深刻化している状況です。
しかも、今後もこの状況は続くといわれています。
人手不足の中でも企業が成長するためには、人材育成を通して生産性の向上を図るのが最も現実的でしょう。
人材育成の目的③組織力の向上
いくら個々のスキルが高くても、組織としてのまとまりがなければパフォーマンスは低下します。
そのため、複数人で取り組むプロジェクトのような業務がある企業であれば、組織力の向上も人材育成の目的となります。
組織としてのまとまりが高まれば、業績アップにつながるでしょう。
人材育成の目的④離職を防ぐ
最近では「定年退職まで1つの企業に勤める」という考えを持って入社する新入社員は減っています。
ある程度のスキルを身につけて転職してしまうケースも当たり前になりました。
せっかく時間とコストをかけて採用した人材が他社へ流出してしまうのは、大きな痛手ですよね。
離職を防ぐためには、社員1人ひとりがキャリアアップを描けるような人材育成が必要です。
成長を実感できる人材育成を行うことで、「会社に貢献できた」「自分の居場所はここだ」というモチベーションになり、離職防止につながるでしょう。
人材育成・人材教育・人材開発の違い
人材育成と似た言葉に、「人材教育」と「人材開発」があります。
それぞれの違いは以下の通りです。
- 人材育成:企業の事業や成長に貢献できる人材を育てること
- 人材教育:知識やスキルを教えること
- 人材開発:社員の潜在能力を引き出して、スキルを最大化すること
人材育成と人材開発は似ています。
しかし、人材育成は新入社員や管理職などの階層ごとに、長期間に渡って行われます。
一方の人材開発は、全社員に対して、研修などの短期間で行われるのが特徴です。
人材育成で重要な考え方
次に、人材育成で重要な考え方を3つ紹介します。
長期的な視点で考える
人材育成は、会社の将来や社員のキャリ形成に関わります。
そのため、すぐに取り組みの成果を実感できるものではありません。
長期的な視点を持って、「どのような計画で理想の人物像に近づけるか」と考えることが重要です。
組織にとって理想的な人物像から逆算して考える
育成計画を立てる際は、「このような人材に育ってほしい」というゴールから逆算して考えてください。
理想の人物像は、経営戦略に沿って考えましょう。
階層別に考える
人材育成は、新入社員だけに行うものではありません。
入社して数年経った社員や、管理職に対しても行われます。
そのため、階層ごとに違う育成計画を考えましょう。
人材育成の主な手法
人材育成の主な手法は次の3つです。
- OJT
- Off-JT(研修)
- SD(自己啓発)
これら3つの手法を効果的に使って理論と実践の場を与えることが、担当者に求められます。
OJT
OJT(On the Job Training)とは、職場で通常の業務に取り組みながら、上司や先輩がマンツーマンで指導する手法です。
メリットとデメリットは以下の通りです。
<メリット>
- 人材育成のための時間や場所を設ける必要がなく、手間やコストがかからない
- 実践的な知識を学べ、即戦力としての活躍を期待できる
- 先輩や上司とコミュニケーションを図るため、人間関係が構築されやすい
<デメリット>
- 指導者(先輩や上司)によって指導力にバラつきが出てしまう
- 指導者は通常の業務を行いながら人材育成の時間を確保する必要がある
特に、社員の主体性や自律性を伸ばしたい場合、指導者による差は如実に表れます。
そのため、指導者に対しても十分な研修を行い、支援する体制を整えておきましょう。
また、育成計画や目標、期限などを具体的に共有することも重要です。
Off-JT(研修)
Off-JT(Off the Job Training)とは、職場を離れて行う教育訓練です。
例えば、新入社員向けの「ビジネスマナー研修」や、幹部候補生向けの「マネジメント研修」などがあります。
メリットとデメリットは以下の通りです。
<メリット>
- 業務の意味合いや考え方を学べるため、体系的な理解を深められる
- 専門的な指導者による指導を受けられるため、教育の質が均一
- 社内の横のつながりができやすい
<デメリット>
- 研修の時間や場所、講師の確保が必要で、手間と時間がかかる
- 社員の意欲が低い場合は成長が見込めない
Off-JTは、社員の実務や目標に沿った内容に設定することが重要です。
そのため、事前のヒアリングや意欲向上の動機付けを行なっておきましょう。
SD(自己啓発)
SD(Self Development)とは、自己啓発のことです。
文字通り、休日や隙間時間を利用して、社員個人が自発的に学習することを示します。
具体的には、以下のものがあります。
- 資格取得
- eラーニング
- セミナー・ワークショップ
- 副業
- 書籍
自己啓発のメリット・デメリットは以下の通りです。
<メリット>
- 主体的な社員ほど積極的に取り組んでくれる
- 時間や場所に捉われない
<デメリット>
- 強制力がない
- 受ける人と受けない人で差が出やすい
多くの企業はセミナー代や書籍代などの費用を負担するなどして、社員が自己啓発に取り組みやすい環境づくりをしています。
また、勤務時間内に社外セミナーやワークショップに参加することを認めるなど、時間面での支援をしている企業もあります。
人材育成を始めるための準備
人材育成を始める前に、いくつか準備しておくことがあります。
丁寧に準備を進めておくことで、社員1人ひとりに合った、効果的な人材育成が可能となります。
現状を把握する
まずは会社全体の課題を把握しましょう。
社内の中間層や若手にヒアリングして、以下の内容を明確にしてください。
- 誰がどんな業務を担っているか
- 生産性の高低
- 労働時間や業務量は適切か
- 適切なポジションにいるか
1人ひとりの声にしっかりと耳を傾けていると、会社の課題が複数浮かび上がってくるはずです。
明らかとなった課題の中から、人材育成で解決できそうなものを抽出しましょう。
会社の将来像を明らかにする
次に、会社の将来像を明確にしましょう。
具体的には、以下の2点を行なってください。
- 担当者自身が将来の人員構成を想定する
- 経営者に経営方針などを聞く
将来の人員構成にある程度目処がついていれば、育成計画を立てやすくなります。
闇雲に取り組むよりも「5年後までに管理職が20名必要」と分かっていた方が、何をすれば良いか分かりやすいですからね。
また、経営者が描くビジョンも聞いておきましょう。
経営者が見据える将来像によって、求められる人物像が変わってきます。
このようにして、育成計画を立てるために必要な要件を洗い出していきます。
会社にとって理想的な人物像を考えて、育成計画を立てる
現場の課題と将来のビジョンが明確になったら、今の会社に足りていない部分が見えてきます。
その足りない部分を埋められるように、今後の会社にとって理想的な人物像を考えます。
そして、理想の人物を育てるための育成計画を立てましょう。
育成計画は「5年後に管理職となる社員を20名育てる」といったように、具体的に立てることが重要です。
また、新入社員や管理職など、階層別に作りましょう。
人材育成のポイント
続いて、人材育成で重要なポイントを5つ紹介します。
ポイントを押さえて人材育成に取り組むことで、効果を実感しやすくなります。
人材育成の目的を共有する
ただプログラムを受けさせるのではなく、事前に人材育成の背景や目的を共有しておきましょう。
「何のためにやっているか」「今後にどう活きてくるか」が分かっていると、社員の意識が高まり、施策の効果が出やすくなります。
自発性を引き出す環境を作る
入社直後はやる気に満ち溢れていた社員が、入社後に指示待ちになって、徐々にやる気を失ってしまうという話を聞いたことはありませんか?
これは、自分で考えて行動することよりも、ルールや前例に従うことが当たり前となっているためです。
社員がモチベーションを維持し、やる気を持って業務に励むためにも、社内の環境は重要です。
- 不要な社内ルールをなくす
- 根拠のある評価制度を設ける
- チャレンジを良しとし、失敗を責めない
など、自発性を引き出す環境作りを会社全体で進めていきましょう。
実践機会を設ける
研修やeラーニングなどで学んだ内容を定着させるためには、実践機会が必要です。
社員1人ひとりに行動計画を立ててもらったうえで、学んだ内容を活かせる業務を与えると良いでしょう。
そして、上司や先輩と定期的に実践内容を振り返ることで、スキルの定着に結びつけることができます。
効果測定を行う
人材育成でやりがちなことが、「プログラムをやりっぱなしにすること」です。
振り返りを行わないと、育成施策によって本当に効果があったのかが分かりません。
必ず効果測定を行って、今後に活かせるようにしておきましょう。
効果測定は、定性的・定量的に行うことがポイントです。
- 定性的な評価:上司や先輩からの認識の変化、顧客からの評価など
- 定量的な評価:売上目標の達成度合い、契約成立件数の変化など
効果測定を行うことで、施策の費用対効果を把握できたり、育成計画の改善につながり、次回の育成施策をより良いものにできたりします。
そうやって育成施策の質をどんどん高めていければ、優秀な人材が育つ仕組みができるでしょう。
社員本人への振り返りを行う
社員本人への振り返りもしておきましょう。
実施した育成施策によって得たことや業務に役立ったことなどを考えることで復習になり、スキルの定着を促進できます。
また、次回以降の育成施策に活かせるよう、施策の良かった点と改善点もヒアリングしておきましょう。
社員の声を改善につなげられれば、次回以降で更なる効果が期待できます。
人材育成における課題
続いて、人材育成の課題を3つ紹介します。
もしかしたら、自社で抱えている課題があるかもしれません。
人材育成に割く時間がない
人材育成の重要度を理解していても、人材育成に割く時間がないと、社員の育成は進みません。
担当者が他の業務にも追われ、片手間で人材育成を行なっているようでは、大きな成果は望めないでしょう。
また、忙しすぎるとストレスを抱えてしまいがちです。
ストレスが溜まった状態では、思うように進まない人材育成に取り組むことは難しいでしょう。
そのため、まずは担当者がしっかりと人材育成に取り組める環境を作りましょう。
具体的には、人事施策の整備や業務改善などを行なって、人材育成の工数を確保することが重要です。
スキルや知識が足りない
担当者のスキルや知識が足りなければ、いくら育成施策をきれいに作っても、優秀な人材は育ちません。
育成施策を練る前に、まずは担当者自身の育成スキルを高めておきましょう。
人材育成研修などで、
- ティーチングやコーチングなどの育成手法
- コミュニケーション能力の向上
- 動機付け方法
などを身につけておくと良いでしょう。
計画的に実施できていない
計画的に実施できていないと、育成施策の効果は出にくくなります。
無駄にコストがかかるうえに、会社の方針に対する不信感を抱く社員も出てくるでしょう。
もし、目的が曖昧で不定期な人材育成を行なっている場合は、すぐにやり方を見直しましょう。
BPOに人材育成を依頼するのもアリ
ここまで人材育成の基本的な考え方やポイントなどについて解説してきました。
しかし、「人材育成が重要なのは分かったけど、まだまだ不安だ」と思っている方も多いでしょう。
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BPOとは、アウトソーシングの一種です。
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人材育成を専門に行なっているBPOもあるため、依頼すれば、専門性の高い人材教育を行えます。
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なお、BPOについては以下の記事で詳しく解説しています。
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関連リンク:BPOとは?意味やメリットから導入のポイントや注意点まで徹底解説
まとめ:コツを押さえて優秀な社員が育つ人材育成術を定着させよう
人材育成の基本的な考え方や基本的な手法、成功のためのポイントなどを解説しました。
人材育成は、会社の将来を左右する重要な取り組みです。
もし人材育成に本格的に取り組んでいなければ、すぐにでも始めましょう。
また、目立った成果が出ていない場合は、BPOへの依頼を検討することをおすすめします。
1度優秀な社員が育つ仕組みが定着すれば、会社全体が良い方向に進むはずです。
ぜひ、自社の人材育成について、もう一度真剣に考えてみてください。
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