デジタル人材はさまざまな企業でよく聞く言葉ですが、具体的にどのような意味なのかわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、デジタル人材の基本情報や求められるスキル、育成事例などを紹介します。
デジタル人材がどのような人材のことを指すのか知りたい方や、そのような人材を育てる上でのコツが知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
デジタル人材とは?
デジタル人材とは、最先端のデジタル技術を使い、企業に対して新しい価値を提供できる人材のことです。
具体的には、ビジネスプロデューサーやビジネスデザイナー、データサイエンティストなどが当てはまります。
最先端のデジタル技術とは、5GやIoT、ビッグデータなどを指すことが多いです。
デジタル人材に関しては国も取り組んでおり、例として経済産業省ではマナビDXやマナビDXクエストといったデジタル人材に関するサイトを用意しています。
デジタル人材とIT人材の違い
デジタル人材と似たような言葉として、IT人材があります。
IT人材は、ITの活用や情報システムの導入に対する企画・推進・運用を行う人材のことです。
デジタル人材が最新技術で新しい価値を提供する人材であるのに対し、IT人材は最新技術の実行および運用を行う人材と考えればわかりやすいでしょう。
ただ、双方とも似たような意味であるがゆえに、一般的には同じような人材として捉えられている傾向があります。
デジタル人材と資格
デジタル人材に関する資格はさまざまあり、それらを社員に取得してもらうことでデジタル人材の確保につなげられます。
主なものとしては、以下のとおりです。
ITパスポート試験
ITパスポート試験は国家資格の1つであり、ITに関する基礎的な知識を持っていることを証明できます。
基礎的なことを習得できることもあり、会社員だけではなく、学生にもおすすめしたい資格です。
国家資格の中では比較的簡単な資格とされており、IT系企業への就職を目指す方にも向いています。
実際に新卒採用活動において、ITパスポートを持っているかどうか聞かれるかもしれません。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は情報処理技術者試験の1つであり、システム開発の超上流から関わる人材です。
具体的には事業を計画する段階から参画し、経営者の視点に立ってIT戦略の立案と実行を主導します。
ITストラテジストは国家試験でもあり、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が認定を行っています。
なお、ITストラテジストは職種名ではない上に、必ず資格を取得する必要があるというわけではありません。
しかし、持っていればITストラテジストに欠かせないスキルを持っているという証明になります。
ITコーディネータ試験
そもそもITコーディネータとは、経営とITの橋渡し役として、本当に経営で役立つIT投資を推進および支援する専門家のことです。
ITコーディネータ試験は50時間以上の勉強時間が必要とされており、合格率は70〜90%とされています。
ITコーディネータに関してはデジタル人材を目指す方だけではなく、企業の経営状況に関することに興味がある方や、情報収集の能力が高い方にも向いています。
デジタル人材が不足している理由
現在、我が国においてデジタル人材は不足しており、多くの企業でデジタル人材を求めています。
不足している理由としては、以下の2つが挙げられます。
- DX推進で需要が増大しているため
- まだデジタル人材の教育体制が整備されていないため
それぞれどのようなものなのか、1つずつ紹介します。
DX推進で需要が増大しているため
そもそもDXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略であり、デジタル技術を用いて生活やビジネスが変わっていくことを指します。
DXは今後さらに重要になるとされており、IT業界を中心にニーズが急激に高まっています。
そのニーズに応えるためにデジタル人材がより求められ、現状のデジタル人材が不足している状態なのです。
まだデジタル人材の教育体制が整備されていないため
デジタル人材の育成体制がまだ整備されていないことも、不足している理由の1つです。
事実、2022年に総務省が発表した報告書によると、日本企業の38.9%がデジタル人材を育成する体制が整っていないという結果が出ています。
また、日本企業の43.2%において採用体制が整っていないという結果も出ています。
デジタル人材に求められるスキル
デジタル人材に求められるスキルとしては、デジタル技術を活用できるスキルと問題を解決するためのスキルの2つが挙げられます。
それぞれどのようなものなのか、1つずつ紹介します。
デジタル技術を活用できるスキル
1つ目は、デジタル技術を活用できるスキルです。
具体的には、プログラミングスキルやデータ分析スキル、デザインスキルなどです。
上記で紹介したように、デジタル人材は5GやIoT、ビッグデータなどの最新技術を扱います。
最新技術というのは日々アップデートされていくものであるため、それらを日々キャッチアップしてスキルを磨き続けることが求められます。
問題を解決するためのスキル
2つ目は、問題を解決するためのスキルです。
デジタル人材は、ただ最新技術を持っているだけの人材ではありません。
それらの技術を使いつつ、会社が抱える問題を解決するスキルも重要になります。
具体的には、コミュニケーションスキルやプロジェクトマネジメントスキル、計画力などが当てはまります。
デジタル人材として活躍できる社員に育てるためには、上記で紹介したスキルとこのスキルの双方が必要です。
デジタル人材を育成する上でのコツ
デジタル人材を育てるためには、以下のようなコツが挙げられます。
- 教育する人材をしっかりと選ぶ
- 研修を行う
- 資格取得のサポートを行う
- ワークライフバランスの充実化を図る
- 適切に評価する
- 既存従業員との交流も行う
コツを覚えておけば、効果的に効率よくデジタル人材を育成しやすくなるでしょう。
教育する人材をしっかりと選ぶ
デジタル人材として育てる社員をなんとなく選ぶのはおすすめできません。
理由として、社員によってデジタル人材になりたい意欲に差があるかもしれないためです。
デジタル人材には適正があるため、きちんと社員を厳選して適切な人物に教育を行いましょう。
例えば、業務の問題解決に対して高い意欲を持っている社員やリーダーシップがある社員などが挙げられます。
研修を行う
デジタル人材を育成するための研修を行い、必要なスキルの習得を目指しましょう。
この際、ハンズオン講座(体験学習)や社外から招いた講師による講義が効果的です。
研修を行うことで効率よく社員のスキルアップを図れます。
また、現在ではeラーニングやオンライン研修のようなスタイルもあるため、テレワークを導入している企業でも、研修を行いやすくなっています。
資格取得のサポートを行う
別の項目で紹介したように、デジタル人材に関する資格はいくつもあります。
そのことから、資格取得のサポートを行うのも良いでしょう。
具体的には、勉強会を開催したり、資格を取得する際にかかる費用を一部補助したりする、などが挙げられます。
資格取得のサポートに関しては、福利厚生として設けている会社もあるかもしれません。
ワークライフバランスの充実化を図る
ワークライフバランスの充実化も、デジタル人材の育成に効果があります。
ワークライフバランスを整備することでデジタル人材が定着すれば、育成後に離職されてしまうリスクを減らせるでしょう。
このことは、デジタル人材を採用した場合にも当てはまります。
事実、株式会社NTTデータ経営研究所が行ったアンケート調査の結果では、採用したデジタル人材は転職意向の有無にかかわらず、ワークライフバランスの充実化がデジタル人材の定着につながると発表されています。
適切に評価する
人材育成において、適切な評価が重要です。
理由として、きちんと評価しないと対象者が成長している実感を得られず、モチベーションの低下につながってしまう可能性があるためです。
積極的にデジタル人材となるための勉強をしてもらうためにも、状況に応じて適切に評価しましょう。
また、適切に評価することで離職されてしまうことも防ぎやすくなります。
既存従業員との交流も行う
デジタル人材は固有の高いスキルを持っているがゆえに、通常とは異なる優遇で迎えられる可能性があるでしょう。
正当に評価する上でやむを得ないことですが、そうなると周囲の社員から孤立してしまう恐れがあります。
そのようなことを防ぐために、既存従業員との交流を行い、相互理解を深められるようにしましょう。
社員同士の理解が深まれば、業務の効率化につなげられます。
デジタル人材の育成事例
デジタル人材の育成は、複数の企業で行われています。
そこで最後の項目では、ダイキン工業株式会社や日清食品ホールディングス株式会社といった企業の育成事例をピックアップして紹介します。
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社では、2017年に社内でデジタル人材を育成するための組織であるダイキン情報技術大学を創設しました。
新入社員に対して2年間徹底的にデジタル技術の教育を行うというものであり、その結果として各事業部門の現場でIT活用の取り組みが進んでいます。
また、2021年には新入社員を対象としたデータ分析コンペを実施しており、デジタル人材の育成を加速させています。
日清食品ホールディングス株式会社
日清食品ホールディングス株式会社では、DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)というスローガンを掲げて、全従業員のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
具体的には、社内標準PCを携帯しやすいMicrosoft Surfaceに変えたり、ビデオ会議を簡単にできるMicrosoft Teamsを活用したりなどです。
また、事業部門内でアプリケーションを開発できる環境を構築しており、開発されたアプリケーションが実用化されるという成功体験を蓄積して、DXの推進力につなげています。
キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングス株式会社では、独自のDX人材育成プログラムであるキリンDX道場を創設しました。
キリングループの全従業員が対象で、グループ全体の従業員のDXリテラシーの向上を目指しています。
また、キリンホールディングス株式会社の場合は社内人材の発掘・育成を継続的に行っており、上記で紹介したキリンDX道場やOJTなどを通してデジタル人材を育てています。
ソフトバンク株式会社
ソフトバンク株式会社では、2017年にDX本部を設立しました。
営業部門や企画部門で活躍していた人材をメインにDX人材の候補者をピックアップし、必要な研修を実施しました。
この際、ソフトバンク株式会社は事業プロデューサー制度を設け、求められている人材を明確化しました。
また、各々のスキルをアセスメント指標で診断して育成成果を可視化し、デジタル人材の育成に役立てています。
株式会社みずほフィナンシャルグループ
株式会社みずほフィナンシャルグループでは、デジタル人材として役立つ資格の取得を積極的に推奨しています。
特にITパスポートとG検定、データサイエンス検定の3つの受験を推奨しており、各資格の学習方法や書籍なども紹介しています。
なお、今後はさらに専門的な知識を持った人材の育成に取り組んでいくとされています。
まとめ:事例を参考にデジタル人材を育成しよう!
今回は、デジタル人材の基本情報や求められるスキル、育成事例などを紹介しました。
デジタル人材とは最先端のデジタル技術を使って、企業に対して新しい価値を提供できる人材のことであり、IT人材とは少し異なります。
現在の日本においてデジタル人材は不足しており、さまざまな企業が人材の育成を行っています。
この記事ではデジタル人材を育成する際のコツも紹介したため、それらを活かしてあなたの会社でも育成してみてはいかがでしょうか。
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